山下ふみこオフィシャルブログ
2023.02.09
湯河原町議の懲罰について
2年前、大法廷で判例変更を勝ち取った(出席停止の懲罰を司法審査の対象とした)岩沼市議会議員の大友健さんのブログです
議会は謝罪を、町は慰謝料を/出席停止で判決
- 神奈川県湯河原町議会の土屋由希子氏が、出席停止の懲罰は違法だとして提訴していた裁判の判決言い渡しが2月1日に横浜地裁であり、議会に対しては謝罪広告を議会報「議会ゆがわら」に掲載することを、町に対しては慰謝料20万円(国家賠償)を支払うことを命じました。
- 懲罰議決の取り消しは訴えの利益がない(取り消しに伴う実利がない)として却下されましたが、懲罰の不当性が指弾されるなど土屋氏にとって完ぺきな勝訴となりました。
(2月1日午後、横浜地裁前)
裁判支援ということでその日、私は傍聴に行きました。この訴訟は、2020年11月に私が勝ち取った最高裁の判例変更「出席停止も新たに裁判の対象に加える」がなされた後の21年1月に提訴された出席停止裁判の第1号です。仙台地裁でいま進められている私の差し戻し裁判の判決言い渡しは、3月にあると見込まれますが、その弾みとなる「土屋勝訴」でした。
土屋氏への懲罰は、秘密会として開かれた特別委員会の内容を他に漏らしたという会議規則違反を理由に科されました。町議に初当選しておよそ半年の9月定例会。最初の懲罰は「陳謝」でしたが、陳謝文の内容に納得できなかったため本会議場で朗読することを拒否すると、今度は1日間の「出席停止」が科されました。
ちょうどそのころは、私の裁判が最高裁の大法廷に回付されたときで、10月に大法廷意見陳述、11月に大法廷判決言い渡しが予定されていて、土屋氏とその弁護団は私の裁判の推移に着目していたところ、判例変更があったので提訴したという流れにありました。
「秘密を漏らした」とされた特別委員会とは、町税等徴収対策強化特別委員会でしたが、町民税や固定資産税などの滞納者約2000名の個人名や法人名、住所、滞納の経過などを記した分厚い滞納者名簿をマスキングもせずに委員のほか傍聴の議員に配って、しかも、会議終了後に名簿を回収することもなく、自宅に持ち帰ったのでした。ちなみに土屋氏は、特別委終了後に返しています。
考えられない「超極秘な」個人情報の「公開」ですが、こんなことをしている町長と役場、そして議会・議員との怪しげな関係、、、、、、しかも、10年ぐらい続けられていたという行政と議会との関係(癒着? 一体化?)、、、、、、こちらのお粗末な行政こそが問題ではないかと思うのですが、これを土屋氏が9月定例会の一般質問で取り上げたり、SNSに挙げたりしたら、ほかの議員たちが懲罰に走ったという流れなのです。
懲罰に走るとなったら、あとは理由をこじつけて、懲罰委の運営・懲罰の手順を多数決で決めていけば、邪悪なことも含めて決められていきます。多数決の怖さです。
自分を律することができる「自律機関」といわれる議会も、ときによっては、地域によっては、多数決を絶対視する「暴走機関」に変ぼうします。
湯河原議会では懲罰に走る多数派が「善」で、土屋由希子氏だけが「悪」に追いやられました。しかし、事実に基づいて法理で裁く司法(裁判所)は、懲罰に走った多数派を「悪」と判断して、土屋氏が「善」と断じました。逆転です。
数は必ずしも絶対ではないのです。
判決では、土屋氏の一般質問やSNSの内容については「秘密を公開したことには当たらない」「土屋氏を処分する理由はない」「会議規則には違反していない」「土屋氏にルール違反はなかった」と言い切っています。懲罰を科したときの「議会ゆがわら」は「事実でない記事を載せた」「記事には故意と過失が認められる」などとも断定し、謝罪広告の掲載と土屋氏に対する慰謝料20万円の支払いにつなげています。
謝罪は、判決確定後に発行される「議会ゆがわら」に一定の大きさで掲載せねばなりません。謝罪文面も、判決の中に示されています。2週間後までに町と議会側が控訴しなければ確定しますが、「(懲罰のときにさあ)土屋議員の行為が『議員としてあるまじきこと』って言っちゃったけどゴメンね」といった趣旨のことを議会に言わせるんだからすごいことです。懲罰を科した議会にとって、屈辱的な謝罪ですよね。
自律的機関である議会も、第三者から見れば非常識なことをやっている面もあるのです。自律の基礎が多数決原理ということが実は、一番危ないのです。
岩沼市議会もそうです。
第三者である仙台地裁から見た、しっかりした裁定があることに大いに期待したいと思えるのは、土屋判決の中にその伏線を見たからです。