山下ふみこオフィシャルブログ
2022.01.17
またまた地方議会における懲罰
去る1月14日に開催された鶴岡市議会懲罰特別委員会において、田中議員の「弁明」を全文掲載します。
そこには沼津市議会の懲罰についても触れています。
全国各地で議員が議員の発言を制限する行為が、果たして議会制民主主義と言えるのか市民も疑問を呈しています。
全国の地方議会において、沼津市議会はもとより少数派といわれている地方議員の懲罰問題が多発しています。
1/15 鶴岡市議議員田中宏さんのFBから
鶴岡市議会懲罰特別委員会において、僕が行なった「弁明」を全文掲載します。
なお「(※)」部分は、若干の説明を補足した箇所です。
***
弁明の機会を与えていただき、ありがとうございます。
12月16日、本会議における賛成討論での発言には当該議員の「名誉を傷つけ、精神的苦痛を与える」意図はまったくありませんでしたが、不愉快な思いをされたのだとすれば、心からお詫び申し上げます。
その賛成討論の論旨は大きく3点です。
①「沖縄戦戦没者の遺骨を含む土砂を埋め立て等に使用する計画の中止を国に求める意見書の提出を求める請願」人道的な問題。党派や思想を超えて賛成できる内容であり、山形県内を含めた全国の議会で続々と採択されている
②若年層の政治参画への意識を高め、主権者教育を充実することは喫緊の課題。今回の請願では高校生も周りの友達や大人に対して署名を呼びかけるなど、社会参加、政治参画への意識の高まりが見られた
③請願者が自らの口で趣旨説明・意見陳述したいと希望しているのに門前払いしたこと、請願の趣旨を問うのではなく、請願者のプライバシーを詮索するような質問がなされたことは、議長が掲げる「開かれた議会の推進」に逆行しており、抜本的な議会改革を期待する
また、取り消した発言(※)をこの場で引用することはできませんが、
①総務常任委員会での請願審査における質問のあり方 と
②請願者や賛同する署名を寄せた市民への対応に疑問を呈すると共に
③未来を担う若者たちに対して議会側から不必要なプレッシャーを与えるような態度や言動は避けるべきだ
と主張した300字あまりの部分です。
(※)会議録およびYouTubeから削除されており、引用すると再び発言取り消しが必要になる
では、なぜ、取り消したのか。
12月16日夕刻、議長からは発言を取り消せば穏便に済むのではないか、との助言もいただきました。翌日12月17日は定例会最終日であり、議員だけでなく、市長をはじめ大勢の市職員が関わっている、大切な本会 議の時間を空転させることがないように、発言の一部を取り消す苦渋の決断をしました。 しかし翌日、私への懲罰動議をめぐって、数時間に渡って本会議が中断されてしまいました。こうした事態を避けるために発言取り消しを行ったのですが、同じ結果になってしまったことは痛恨の極みであります。
私を含めて全ての議員は市民の負託を受け、市民の代表として発言しています。公人が会議録の残る公式の場で発言するからには、それなりの 覚悟があってしかるべきであり、私もそのような覚悟を持って発言しました。鶴岡市議会会議規則第152条「議会の品位を重んじなければならない」を遵守した健全な議論に必要である場合は、発言者を特定しての批判や指摘も許容されると考えます。
さて、今回の懲罰動議では、私の賛成討論での発言が
・個人を特定して侮辱する不穏当な発言
・当該議員の人格そのものを著しく貶める
・個人の名誉を傷つけ、精神的苦痛を与える
・人権侵害にもあたり無礼極まりない
として、地方自治法第132条および鶴岡市議会会議規則第152条に違反しているものだとされています。
私の発言が懲罰の対象になるかどうかを判断する材料として、前提となる12月7日の総務常任委員会での当該議員の発言に注目したいと思います。地方自治法第132条では「普通地方公共団体の議会の会議又は委員会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。」と規定されています。
これは「議事に関係のない個人の問題を取り上げて議論することは許さず、また公の問題を論じていてもその発言が職務上必要な限度を超えて個人の問題に立ち入って発言されることを許さないとする規定」だと解釈されています。
請願者は「今回、総務常任委員会で、請願者としての発言は許されない一方、自分のプライバシーについて詮索するような質問があったことで、晒し者にされたと感じ、つらい想いをした」と語っておられます。
当該議員が総務常任委員会で行なった請願者のプライバシーを詮索する質問は、まさに今回の懲罰動議の根拠とされている地方自治法第132条に抵触する可能性があります。
昨年12月18日付の山形新聞には、当該議員の「威圧的に発言した認識はなく、見解の相違がある」とのコメントが掲載されていますが、市民感情、市民の意識と乖離したコメントだと感じます。
国民の請願権を保障した憲法第16条では「何人も(略)平穏に請願する権利を有し,何人もかかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない」と定めています。プライバシーを詮索され、晒し者にされるよう な状況で、「平穏に請願する」ことが可能でしょうか。鶴岡市議会が「開かれた議会」を目指す上で、請願審査のあるべき姿についても議論が必 要だと、声を大にして申し上げておきます。
なお、前回の懲罰特別委員会の冒頭、委員長が「討論のあり方」に言及していたと傍聴者からお聞きしました(※)。私の12月17日の賛成討論が討論のあるべき姿から逸脱していると感じたこと、討論のあり方について今後議会運営委員会等でしっかり議論し確認をお願いしたい、という趣旨の発言をなさったとのことです。私も議会運営委員会のメンバーですので、鶴岡市民の多様な意見を反映した自由闊達な討論がなされる環境づくりに向けて、ぜひとも議論に加わっていきたいと思います。
(※)委員会開会前の発言だったため、会議録には記録なし
最後に、「懲罰」制度のあり方について述べます。
近年、地方議会の多数派が少数派に対してプレッシャーをかける手段として懲罰を「濫用」する事例が出ています。直近では、昨年12月の静岡県沼津市議会において、ある議員が行なった一般質問での発言が懲罰動議提出の理由となり、それによって懲罰が科されました。 その処分が不当であるとして、全国各地の現職議員や元議員など100名以上の連名によって、沼津市議会議長に対して抗議と要請の文書が提出されました。この文書では「議会は市民から負託を受けた議員の言論の府であり、自由な発言が保証されるべき」であり、「こうした安易な懲罰動議は、沼津市議会の自由な発言、更には全国の地方議員の活動の萎縮を招くことになりかねず、議会制民主主義の破壊につながる」と指摘しています。
また、2020年11月には、60年ぶりに最高裁が判例を変更し、地方議会における懲罰の司法審査の範囲が拡大されたことも注目すべきです。
本日、平日午後という時間帯にもかかわらず、大勢の市民が傍聴においでくださっています。(※)
懲罰特別委員会という私にとっては非常に不名誉な場ではありますが、市議会への関心が高まり、議員一人一人の発言や賛否表明に注目が集まっていることについては、鶴岡市における地方自治と民主主義の成熟に寄与したと感じているところです。
(※)世代も地域もさまざまな20数名が傍聴。心強かったです!
本委員会では、私の発言のどの部分が、どのように、
●地方自治法 第132条 普通地方公共団体の議会の会議又は委員会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。
●鶴岡市議会会議規則 第152条 議員は、議会の品位を重んじなければならない。
に抵触し、懲罰に該当するのか、具体的かつ論理的に精査していただきたいと願います。 懲罰制度を濫用したと思われかねない悪しき前例にならぬよう、鶴岡市の議会制民主主義の未来のためにも、委員の皆さんの良識ある議論を期待するものであります。
以上です。